2022/12/05更新
【一人親方】年金を払いたくない!それでも、払うべき理由
仕事
職人の皆さん、年金保険料を払っていますか?
企業に雇用されていて、厚生年金保険料が給料から引かれているなら、問題はありません。
しかし様々な考えから、フリーの職人や一人親方の中には国民年金保険料を払っていない人が少なくありません。
年金とはどういう制度か、なぜ支払わなくてはいけないのか、解説します。
目次
年金制度の基本
まずは、年金について簡単に説明しましょう。
年金の目的
年金の本来の目的は「現役世代が高齢者の生活を支援する」というものです。
私たちが支払う年金保険料は、支払者の「老後のための貯金」ではなく、現在の高齢者の年金として使われています。
年金には2種類ある
年金には国民年金と厚生年金があります。
5人以上の従業員がいる会社の場合、厚生年金制度に加入しないといけない規則になっています。
一方、従業員が5人未満の事業所に勤めている職人や、フリーの職人(一人親方)は、国民年金に加入しなくてはいけません。
年金を払わないと、どうなる?
「手取りの金額を減らしたくないから、年金を払いたくない」という意見をよく聞きます。
では、もし多くの人が保険料を払わなくなったら、どのような問題が起きるのでしょうか?
現在、65歳以上の高齢者世帯で、収入源が年金のみの世帯は全体の24.9%です。
皆さんが保険料支払いをしなければ、高齢者が受給できる年金額がどんどん減ってしまいます。
すると多くの高齢者は、自身の子どもなど収入のある親族に頼るか、生活保護を受けることになります。
現役世代の人々は、親や祖父母世代の金銭的援助をしなくてはいけなくなり、さらに生活保護の財源確保のために税金が上がることも考えられます。
自分の老後のための貯金も別途しなくてはいけません。
つまり、年金の不払いをすると、浮いた分以上の負担がのしかかってくるのです。
*参考元:厚生労働省 2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況
年金制度は破綻しない
「自分が老後を迎えるころには、年金制度は破綻しているのでは…?」と考える人もいるかもしれません。
しかし先述の通り、年金制度によって支払者と受給者お互いの生活が成り立っている部分が大きいため、年金制度そのものが破綻することは、まずありません。
仮に年金制度が破綻した場合、受給する権利を既に持っている人々から政府に対して訴訟が起きるでしょう。また、多くの高齢者は生活が立ちゆかなくなるため生活保護を受けることになり、政府の財源は大いに圧迫されます。
年金制度の破綻は、日本という国自体が破綻することにつながってしまうのです。
もらえる金額は少なくても、ないよりはマシ!と考えよう
急速な少子高齢化の影響で、私たちが高齢者になるころには、現在の高齢者が受給しているのと同じ率でもらえることはないかもしれません。
受給開始の年齢が後ろ倒しになる可能性もあるでしょう。
ここで、将来もらえる年金の額をシミュレーションしてみます。
国民年金を支払う義務があるのは、20歳から60歳までの40年間(480か月)です。
40年間全額を支払った場合、もらえる額は1年で777,800円、月額で64,816円です。(2022年度の場合)
65~80歳まで受け取るとして、2022年度の金額で単純計算すると、もらえる金額は以下のようになります。
- 777,800円 × 15年 = 11,667,000円
では、60歳になるまでに実際に支払う額は、いくらでしょうか。
保険料は毎年見直されますが、2022年度の年金保険料は1か月16,590円です。こちらも計算を簡略化するため2022年度の金額で計算します。
- 16,590円 × 12か月 × 40年 = 7,963,200円
もらう額は、支払った額の約1.4倍になるのです。
今後は少子高齢化の影響で、年金保険料が上がったり受給額が減ることが考えられますが、それでも支払った額より少なくなることはまずないでしょう。
保険料を払う代わりに貯金したとして、老後の生活資金を1,000万円貯める自信はありますか?
年金には老後以外のメリットもある
国民年金のメリットは、老後に受給できるお金だけではありません。
障害基礎年金
障害基礎年金とは、国民年金に加入している間に病気やケガで障害を負った場合、その程度に応じてもらえる年金のことです。
60歳未満でも受け取ることができます。
職人の場合、足場から落ちて半身不随になったり、腎疾患や肝疾患に陥ったりする人は少なくありません。少ないとはいえ、この年金は生活の保障になります。
障害基礎年金額は毎年度ごとに変わり、2022年度の場合、金額は以下の通りです。
- 1級障害…972,250円(月額 81,020円)
- 2級障害…777,800円(月額 64,816円)
子どもがいれば、さらに加算されます。
遺族基礎年金
考えたくないことですが、万が一の事故で自分が死亡する可能性もあります。
遺族基礎年金とは、そんな場合に配偶者や子が受け取れる年金のことです。
これには受給条件があります。
- 18歳までの子どもがいる(18歳になった年度の3月31日まで)
- 国民年金の加入期間の2/3以上、保険料を納付又は免除されている
ほかにも細かい規定がありますが、例えば妻・子1人がいて、妻が遺族基礎年金を受け取る場合、1年で受け取れる金額は1,001,600円です。
払えない場合は、免除制度や納付猶予制度を利用しよう
やりくりが苦しくどうしても年金を支払えない、というときもあるでしょう。
その場合は、免除制度や納付猶予制度を利用しましょう。
免除制度
年金の支払いが免除され、しかも老後は一定の割合で年金をもらえる制度です。
市区役所・町村役場の国民年金担当窓口や年金事務所で手続きが可能で、前年の所得が一定の金額以下であれば免除を受けることができます。
免除率には4種類あり、それぞれ、満額支払った場合に対してどれくらいの比率でもらえるかが決まっています。
例えば全額免除になった場合、その期間中は年金保険料を払わなくても、全額払った場合の1/2を受け取ることができるのです。
手続きをせずに未納のままにしてしまうと、将来もらえる年金の額が減ってしまいます。払えないときは、必ず免除の手続きをしましょう。
なお、10年以内であれば、免除された分を後から支払うこともできます。
年金制度を悪く言う人が多いですが、こう考えるとかなり太っ腹な制度ですよね。
納付猶予制度
0歳から50歳未満で年金保険料の納付が困難な場合に、申請すると支払いを待ってくれる制度です。
この制度の場合、猶予された期間は年金受給資格期間に含まれますが、後から追納しなければ金額の受給額が増えることはありません。
年金制度を味方につける
年金制度はわかりにくく、しかも毎年細かい部分が変わりますから、面倒だという気持ちはよくわかります。
しかし、自分や家族の未来・老後を考えると、損する制度ではありません。
払えるなら払う、余裕がなければ半額でも1/4でもいいから払う、払えないときは忘れずに手続きをするのがおすすめです。
年金制度を味方につけて、老後や障害を負ったときの心配を少しでもなくしていきましょう。
参考元:
*日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
*日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
*日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
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