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2020/12/18更新

突然の入院でお金が…!いざというときの高額医療費制度を簡単解説

生活

 
突然の入院や通院が必要になってしまい、高額な医療費がかかってしまった人は少なからずいるのではないでしょうか。

特に乾燥した寒い冬は、風邪やインフルエンザにかかりやすいだけでなく、血液が固まってしまう血栓症や、心筋梗塞、脳梗塞など、命に関わる病気を発症しやすい時期でもあります。

急な入院になってしまい、お金の準備が間に合わない!ということにならないよう、高額医療費制度についての知識をつけておきましょう。

今回は、健康保険(健保)に加入している70歳未満の人を対象に、高額医療費制度について簡単解説します。

今年はコロナ禍でなかなか病院に行けなかった場合でも、いつ高額な医療費がかかるか分かりません。
今から予備知識をつけておくだけでも、いざというときに役立ちますよ。
 

医療費にかかった費用の控除


 
医療費にかかった費用が高額になった場合、その金額によって利用できる制度が高額医療費制度と医療費控除の2種類あります。
 

高額医療費制度とは

 
高額医療費制度とは、月の初めから終わりまでの1ヶ月の間に、病院や薬局などに支払った額が一定額を超えたときに、超えた金額を支給してもらえる制度です。

つまり、1ヶ月の間に支払った医療費などの金額が一定額を超えていれば、超えた分の費用が戻ってくる仕組みです。

自分が病院などに負担する上限額は、年齢、所得によって異なります。
 

医療費控除との違い

 
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に、自分(本人)もしくは自分と生計を共にしている家族のために支払った医療費が、一定額を超えた場合に所得から控除を受けられる制度のことです。

医療費控除制度は、医療費控除とセルフメディケーション税制制度があり、どちらか一方の申請ができます。

高額医療費制度は直接払い戻しがあるのに対し、医療費控除は税金が安くなるという違いになります。

高額医療費制度と医療費控除の併用は可能ですが、医療費控除申請時に高額医療費で支給された額を「保険金などで補てんされる金額」とする必要があります。

 
医療費控除について
医療費が多くかかったら!申請しないと損する医療費控除を簡単解説

セルフメディケーション税制について
薬代が多い!?申請しないと損するセルフメディケーション税制について
 

支給対象になる医療費

 
高額医療費制度を利用するにあたり、申請できる医療費とそうでないものがあります。

高額医療費制度の対象は保険適用される医療費となり、全額自己負担となる医療費は対象になりません。

支給対象にならない医療費例

  • 先進医療にかかった費用
  • 差額ベッド代
  • 入院中の食事代
  • 自由診療代
  • 自然分娩による出産

 
 

高額医療制度の仕組み


 

自己負担額の上限

自己負担限度額は、70歳未満かそれ以上かの年齢と所得によって異なりますが、ここでは健康保険に加入している70歳未満の場合を紹介します。

70歳未満の場合

被保険者の所得区分自己負担限度額
標準報酬月額83万円以上252,600円 +(総医療費 ー 842,000円)× 1%
標準報酬月額53万〜79万円以上167,400円 +(総医療費 ー 558,000円)× 1%
標準報酬月額28万〜50万円以上80,100円 +(総医療費 ー 267,000円)× 1%
標準報酬月額26万円以下57,600円
低所得者35,400円

標準報酬月額とは、基本給と支給される役職手当や通勤手当、扶養手当、残業手当、などの諸手当や賞与も含まれます。

低所得者は、被保険者が住民税の非課税者等である場合です。
総医療費とは、保険適用される診療費用の総額(10割)のことです。
 

自己負担限度額と支給される金額の例

健康保険に加入している被保険者X、35歳(標準報酬月額30万円)で入院による月の総医療費が90万円の場合

病院での支払い額(自己負担額):270,000円(総医療費90万円の3割負担)

自己負担限度額: 80,100円 +(900,000 ー 267,000円)× 1% = 86,430円

高額医療制度で支給される金額(払い戻される額):270,000円 ー 86,430円 = 183,570円

 

入院費用27万円を退院時に支払い、後日高額医療費制度を申請すると、約18万円が戻ってきます。
つまり、高額医療制度を利用すると実際に支払う医療費は9万円弱になります。
 

世帯合算

 
被保険者1回分の医療費が高額医療費の対象金額にならなかった場合でも、同じ月に複数回かかった医療費や、被扶養者にかかった医療費を合算して、自己負担限度額を超えていれば申請できる場合があります。

申請条件(70歳未満の世帯の場合)

  • 世帯で合算する場合は、同じ医療保険に加入していること
  • 同じ月に発生した医療費であること
  • 同一人の受診者(70歳未満)が、同じ区分での自己負担額が21,000円以上であること

 
区分とは・医療機関(病院/クリニック/薬局)・医科歯科外来入院で分けられ、それぞれの区分での合計が21,000円以上であれば合算できます。

同じ医療機関でも医科と歯科、外来と入院の医療費は別扱いになるため、それぞれで21,000円以上かかった場合に合算の対象となります。

なお、70歳以上の場合は自己負担額が21,000円以下でも合算対象になります。

受診した医療機関から交付された処方箋による薬剤費用は、交付元である医療機関の費用に含むことができます。

上記の条件に全て該当していれば、世帯合算が可能になります。
 
 
例1【35歳、被保険者X(標準報酬月額30万円)の場合】

  1. 11月03日 A病院 医科外来10,000円・院外処方3,000円
  2. 11月10日 A病院 歯科外来費用30,000円
  3. 11月21日 B病院 医科入院200,000円

 
①外来費用と同じ病院から交付された院外処方の費用は医療費と合計することができますが、合計しても21,000円以下なので、合算対象になりません。

②同じ病院でも医科と歯科では合算することはできませんが、歯科外来費用だけでも自己負担額の申請条件(21,000円以上)に当てはまるため、合算対象になります。

11月に支払った自己負担額は、② + ③の合計230,000円となり、自己負担限度額を上回るため、高額医療費の申請をすることができます。
 
 
例2【35歳、被保険者X(標準報酬月額30万円)とその妻30歳、被扶養者Yの世帯の場合】

    被保険者Xにかかった医療費
  1. 12月 2日 A病院 医科外来4,000円・院外処方2,000円
  2. 12月 4日 A病院 医科外来30,000円
  3. 12月 9日 A病院 医科入院費用100,000円
  4. 被扶養者Yにかかった医療費

  5. 12月12日 A病院 歯科外来10,000円
  6. 12月15日 B病院 歯科外来10,000円・院外処方3,000円
  7. 12月20日 B病院 医科外来費用25,000円

   
①と②は同じ病院で同じ区分(医科・外来)のため、合計します。

③は入院費用となるため、①・②とは別の扱いとなりますが、自己負担額の申請条件(21,000円以上)に当てはまるため、合算対象になります。

④と⑤は病院が異なるため合計できません。そのためそれぞれかかった費用が21,000円以下となるため、④と⑤共に合算対象にはなりません。

⑤と⑥は同じ病院ですが、歯科と医科で別の取り扱いとなるため合計できませんが、⑥は自己負担額が21,000円以上となるため合算対象になります。

この世帯が12月に自己負担した額は、(① + ②) + ③ + ⑥の合計136,000円となり、高額医療費の申請をすることができます。
 
 
例3【35歳、被保険者X(標準報酬月額30万円)の入院期間が月をまたいだ場合】

  1. 1月27日~1月31日 A病院 医科入院50,000円
  2. 2月01日~2月05日 A病院 医科入院50,000円
  3. 2月12日      A病院 医科外来10,000円・院外処方2,500円
  4. 2月19日      A病院 医科外来15,000円・院外処方5,000円
  5. 2月26日      B病院 歯科外来18,000円・院外処方4,000円

 
①と②のように、月をまたいでの入院となってしまった場合、それぞれの月でかかった費用に分けて計算されます。

そのため、入院費用の合計が100,000円の場合でも、各月でかかった費用が50,000円となれば、自己負担限度額を超えていないため、高額医療費制度の対象となりません。

ただし、2月は外来にかかった費用があるため、②は合算対象となります。

③と④は同じ病院で同じ区分(医科・外来)のため合計し、21,000円以上となるので合算対象となります。

⑤はB病院から処方された薬代を合計して、21,000円以上となるので合算対象となります。

1月の入院費用は自己負担限度額を上回っていないため、高額医療費制度の対象にはなりませんが、2月に自己負担した額は、② + (③ + ④) + ⑤の合計104,500円となり、高額医療費の申請をすることができます。

入院を予定する場合、入院する月内に退院できるように調整するのがベストです。
 

多数回該当

 
高額医療費の支給を受ける月以前の直近12ヶ月の間に3回以上の高額医療費の支給を受けているとき、4回目から自己負担上限額が引き下がります。

ただし、直近12ヶ月の間に健康保険から国民健康保険に変更しているなどの、医療保険(保険者)が変わっている場合は支給回数に含まれないため、多数回該当には当てはまりません。

 
多数該当の場合の自己負担限度額(70歳未満の場合)

被保険者の所得区分多数該当の場合の自己負担限度額
標準報酬月額83万円以上140,100円
標準報酬月額53万〜79万円以上93,000円
標準報酬月額28万〜50万円以上44,400円
標準報酬月額26万円以下44,400円
低所得者24,600円

健康保険に加入している35歳の被保険者X(標準報酬月額30万円)が直近12ヶ月の間に3回高額医療費の支給を受けている場合

4回目以降の自己負担限度額は44,400円となります。

 

限度額適用認定証

 
入院を予定しているなど、高額医療費の見込みがある場合は、退院時の支払いを自己負担限度額までにとどめる「限度額適用認定証」があります。

限度額適用認定を申請することで、高額医療費の申請が不要になり、準備する入院費を減らすことができます。

高額医療費がかかる可能性がある場合は、早めに加入している医療保険に聞いてみましょう。
 

 

申請について

 

申請期間

 
申請期間は、高額医療費制度の申請を利用するには、高額医療費が発生した月の翌月初日から2年までとなります。
 

申請方法

 
高額医療費制度の申請方法は、控除を受ける本人が加入している健康保険組合などに直接申請します。

医療保険によっては、自動的に支給してくれたり、支給対象を知らせてくれるところもありますが、自身で確認するのが確実です。

 
また限度額適用認定証を申請する場合は、退院する前までに申請し、医療窓口に提示する必要があります。

申請受付月よりも前の月の限度額適用認定証の交付はされないため、余裕を持って申請する必要がありますが、限度額適用認定証には有効期限があるため注意が必要です。

制度の詳細、申請方法や自己負担限度額の所得区分などについて、国民健康保険(国保)と健康保険(健保)によっても異なります。
それぞれ自身の加入している医療保険に必ず確認しましょう。
 

忘れずに手続きしよう

 
入院の予定を立てるときや、急な入院になってしまったときは、高額医療費制度について覚えておくと、余分な出費や、大金を準備するのを減らすことができます。

ただでさえ病気になってしまい、心が休まらないときにお金の心配までしたくないですよね。

いざというときに忘れずに、高額医療費制度の手続きをしましょう!
 
 

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この記事を書いた人

BUILD編集部

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