2023/09/19更新
いつも危険と隣り合わせ!労働災害撲滅に向けて傾向と対策
仕事
40年前、まさしく目の前で、労働災害が発生しました。
あと数十センチ違っていたら、今ごろこのように記事を書くことができていません。
その日は朝から快晴で、墨出し大工さんとコンクリート躯体の精度検査をしていました。
当時、現場は7階建のペントハウスのコンクリート打設を残すのみとなっていました。
そのとき、ペントハウスからパイプが落下してきて“カーン”と言う大きな音がし、墨出し大工さんの脚に当たりました。
右足の地下足袋の小指付近が、きれいにパイプの大きさに切断され、血も何も出ない状況でした。
あと、数十センチ違っていたら、串刺し状態になっていた!!!
いつ起きてもおかしくない、労働災害の現状とすぐにできる対策を紹介します。
目次
現場での労働災害発生頻度
建設業では、永年の労働災害に対する規範の見直しや労働者自身の意識改革により、長期的に死亡者数は減少しています。
最近では、足場に落下防止用のパイプを付けるルール変更になったり、ハーネス型の安全帯の装着が義務化されたりと、いくつもの変更がなされました。
令和4年の建設業の死亡災害者数は281名で、令和2年では増加に転じてはいるものの、10年前の367名と比べると大きく減少しているのがわかります。
どんな事故が多いか?
過去に言われ続けてきた三大労働災害が、現在でも多数を占めています。
「墜落・転落」事故が約40%、続いて「はさまれ・巻き込まれ」事故が10%、「崩壊・倒壊」「激突され」事故がそれぞれ約10%となっています。
労働事故は、いつ発生するのだろうか?
あくまで私見ですが、過去事例から以下の時間帯に多くみられます。
ケース1:朝礼後
ケース2:昼食後
ケース3:終業前
ケース1は、まだ体が暖まっていない状況が原因とも言え、ケース2では満腹感からくる気の緩み、ケース3では家路に神経が傾きやすいなどの理由が考えられます。
どんな状況下でもやはり「常にやるべきことをやる」という習慣づけが必要と思われます。
労働災害の防止策とは
雇い入れ教育
雇い入れ教育を真剣に聞き、取り組むことが重要です。
現場によって特性が異なります。
敷地が傾斜していたり、搬入路が狭かったり、揚重機が小さかったりなどがあるので、よく聞いて、特性に合わせた準備が必要です。
新規入場者教育
新規入場者教育では、注意事項が説明されるので、注意しながら聴き、分からないことがあれば質問して理解を深めましょう。
労働者名簿に連絡先や血液型を記入(申請)し、万が一の時のために、速やかに対処できるようにしておくことも大切です。
朝礼には、きちんと出席し、当日の作業内容や上下作業にならないかなど、作業内容を理解し、作業に就きましょう。
朝礼
朝礼では、現場所長が最後の作業間の調整を発表します。
自分たちの予定作業とラップする場合は、積極的に意見交換し、危険なリスクはきちんと排除するようにしましょう。
また、朝礼体操はしっかりと大きく行ってください。
朝礼にラジオ体操を取り入れている建設業とほかの業種とでは、腰痛や転倒災害の発生率が3分の1以下と言われています。
▽ラジオ体操についての記事▽
作業前ミーティング
作業前ミーティングでは、危険予知を抜かりなく行います。
毎日同じことを書くのではなく、前日に考えてきてもよいので、気を引き締めて行いましょう。
そして朝礼での結果を入れ込み、指差し呼称は、大きな声を出して下さい。
声を出すことは、脳に直結し、意識を高める効果があります。
▽KYミーティングについての記事▽
フルハーネス型安全帯
今、なぜフルハーネス型安全帯なのか?
フル(full)とは「全て」「全部」と言う意味です。
ハーネス(harness)は馬車の引き具や馬具、配管を束ねるもの、または、安全ベルトを意味することから、フルハーネス型とは、体全体をしっかり巻き付け、グリップする安全帯を指します。
従来の胴巻き型安全帯は万が一落下した場合、自分の体重が全て胴巻きの帯部分に集中し、落下の勢いと自重で体の中心部から折れ曲がってしまい、危険な状態になります。
それに対し、フルハーネス型安全帯では、体の一部分に荷重が集中せず安全に体を支える形となり、安全性能が飛躍的に伸びました。
フルハーネス型安全帯の留意点
フルハーネス型安全帯は、墜落災害の決定打と思っていますが、ゆるみなどの装着の不備があると効果が落ちてしまいます。
毎日の点検と、お互いに装着の良し悪しを点検して下さい。
フルハーネス型安全帯は、すでに現場で多くの方々が使用しています。
装着方法や使用方法など、講習会などで勉強されていると思いますが、実際に現場で見ていると不具合も散見されます。
もう一度原点に立ち戻り、注意して確認しましょう。
フルハーネス型安全帯が、現場に野晒しにされているといった保管状況にも注意が必要です。
ヘルメットは、最低1年に1回は交換しなければなりません。
フルハーネス型安全帯も同様で、劣化しないようにきちんと保管し、氏名や使い始めの日付などを記載しなければなりません。
フルハーネス型安全帯のフックを、目の前の手すりなどに掛けている状態も危険があります。
落下してしまった場合、落下の勢いが大きければ大きいほどリスクは高まります。フックを高いところに掛ければ、落下距離が小さくなり安全性が増します。
作業をする中で、足場上の移動が頻繁な職種や仕事内容を考えると、どうしても安易に手前のフックに掛けてしまいがちですが、基準に従って作業しましょう。
▽フルハーネス型安全帯についての記事▽
▽ヘルメットについての記事▽
明るい未来のために
労働災害、特に転落災害などになると大変な重大事故となります。
後遺症が残ったり、ひどい場合は死亡することも考えられます。
実は筆者も、若いころ作業現場で事故に遭ったことがあります。
当時、夜間作業で5階建ての新築現場に従事していたとき、早朝に5階から転落しました。
ちょうど落ちたところには鉄筋が出ていて、鉄筋の開いたところに首が挟まってしまいました。
本当に数センチずれていれば、命はなかったことでしょう。ヘルメットは無残にバラバラでしたが、頭は守られました。
幸いなことに、3か月の入院で済みましたが、今でも後遺症があり、目がよく見えません。
そのとき、安全帯は着けていませんでした。もし装着していれば、こんな後遺症がないのでは、と思うと残念でなりません。
日々のやるべき安全活動をきちんと行い、フルハーネス型安全帯を適切に使用することを、切にお願いしたいと思います。
参考元
*厚生労働省 労働災害発生状況
*厚生労働省 ラジオ体操で行動災害を防止しよう
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